『臨床哲学 アクネトードと私たち』その3

 私は小説家で一週間の出来事を小説にして書いていた。そのために宮沢賢治のバンドのライヴやスタジオ録音に足しげく通った。バンドのリーダーはボイスレコーダー宮沢賢治の詩を節をつけて吹き込んでいた。また、オリジナルのメロディーも吹き込んであり、私は驚いてしまった。私もボイスレコーダーをもっていたので、トルストイの宗教論である『要約福音書』、そして聖書の『ヨハネの黙示録』を吹き込むことにした。この行いで私の希死念慮がへってくれればいいと密かに願った。

 私はバンドではギターをやっていた。ギターは精神衛生上とてもいい。宮沢賢治の詩集『春と修羅』という詩集にちなんで同じ名前のアルバムをインディーズで出すことになった。体操教室が終わって、家につくと一週間の出来事を小説化した物語を書いていった。こどものための物語にするつもりだった。時々、K先生の自宅へ行って、宮沢賢治の一生について対話したりした。私のボイスレコーダーにはK先生との対話や『オイディプス王』、『握手』、アリストテレスの『詩学』などが私の声で録音されていた。
(つづく)