『臨床哲学エセー 或る映画監督の日常』

私はマンガを真似して絵を描く絵師だった。模写をする作品は大抵『るろうに剣心和月伸宏著か『バガボンド井上雅彦著という剣客マンガばかりだった。小説もいくつかは書いてはいたが世に出ることはなかった。私は大谷大学を休学している休学者でニートだった。毎日行くところは沼津のマルサン書店沼津市立図書館と限られていた。
 私は映画監督になりたかったので、絵の修業をマンガでおこなっていた。何故、私が映画監督になりたくなったかというと、劇場版『るろうに剣心』と北野武監督作品の『HANA-BI』を観て、私もこんな映画を作ってみたい、と思ったためだ。問題はいろいろとある。まず、映画を製作するための膨大な費用が家にはないことだ。
 私は日常の出来事を題材にしながらもシェイクスピアの作品を土台とした映画を創っていきたい。なぜならば、黒澤明監督も『マクベス』を下敷きにして『蜘蛛巣城』を書きあげたためだ。そのための脚本を私は現在、練っている段階である。それにはトルストイの『戦争と平和』を音読しきることが大切だと「私の中」では考えている。
 そして、時代劇も手掛けている。それは『バガボンド』を手掛けてきた井上雅彦先生へのオマージュでもある。親鸞を主人公とした物語で、杖に刀をひそませている剣客和尚の物語である。この製作過程は主に絵コンテで行われる。水墨画やペン画、筆ぺん画を使用して映画の計画とカット割りがなされていく。そのために鈴木大拙の『禅仏教入門』を精読している。
 映画作家になろうと思ったのはもう随分と昔のこどもだったころだったのかもしれない。小学校の5年の美術の時間に「未来の私」というテーマで肖像画を描いた想いでがある。そこに描かれていたのはベレー帽をかぶった漫画家のじぶんだった。緑色のベレー帽が妙に印象に残っている。大谷大学を休学する前にはやたらと外へ出かけていた。京都バレエ専門学校にはかなり「お世話」をかけてしまったし、北大路の通りをずーっと歩いて、いまでも弾いているヴァイオリンを買った月光堂、このふたつの場所には脚を向けて眠ることができない程感謝している。
 私がこれからやっていきたいことは大学の単位を一歩一歩着実に習得することだ。また、映画の勉強のためにもたくさん映画を観て、シェイクスピアの『ジュリアス・シーザー』とトルストイの『戦争と平和』を音読しかつまた精読していきたい。