『小説家をめぐる冒険』『小説を書くことについて』

 僕は思いのたけを小説に表現していた。そのぶんだけあらわれる「カタルシス」は深いものがあった。もともと僕は激しく<人と人とのあいだ>をよく考えるようになっていった。<人と人とのあいだ>を書きとめるためにノートに黒いボールペンで「ひっかく」ようにして小説を書いている。小説を書くことはジャズやクラシック音楽を作曲することに等しい、と思っている。
 僕にはKという親友がいた。Kは谷崎潤一郎太宰治が好きでよく小説を書いて出版社に投稿していた。Kは「太宰治の文章はリズムだ。ジャズに似ているかもしれない」と僕に語っていたことがある。Kはジャズやクラシック音楽が大好きだった。Kはいつも真夜中に小説を書いていた。身体性を文体にもたせるためにボクシングをやっていた。僕は小説を書くには体力がいるのでウォーキングやと僕に語っていたことがある。Kはジャズやクラシック音楽が大好きだった。Kはいつも真夜中に小説を書いていた。身体性を文体にもたせるためにボクシングをやっていた。僕は小説を書くには体力がいるのでウォーキングや腕立て伏せをやっていた。
 Kはいつも「僕は生きながら死んでいる」と語っていた。その意味を理解するのに僕はかなりの時間がかかった。青いノートブックにたて書きで恋愛小説を書いていた。僕は一度も恋愛をしたことがないが、「小説家の想像力」に身をまかせて筆のおもむくままに書くことにした。Kはジャズを聴きながら、小説や小説のためのメモを書いたり、本を読んでいた。Kが読む本ははたいていが純文学の小説で読んでいる本にも独得のリズムがあった。