音楽の調べ その①

このところバッハとベートーベンばかりを聴いている。バッハとベートーベンは違った点がおおいにあるが、「かっちり」しているところはすごく似ている。まるで家が建っていくように荘厳な響きを魂の奥底まで響かせている。

バッハは対立法とよばれる手法によってその曲の美しさをたもってきた。特に『平均律クラヴィーア』はその特異性がきわだっている。
私は『平均律クラヴィーア』をヴァイオリンの曲に書きかえて音楽療法に活かしていきたい。

ベートーベンは「主張低音」がはっきりした交響曲が多い。ここでいう「主張低音」とは「倍音声明」ともかかわっている。なにか色彩や心情を表現したいときには「低音」部分が聴衆に響きわたるものだ。

倍音声明」は文学と音楽のなかにとけこんでいる。例えばマーラーの音楽は分裂症的な曲でありながら、聴衆は<大河の一滴>をその一音、一音に聴きとることができる。マーラーの第1番の交響曲や『大地の歌』はそのことが浮き彫りにされている。