音楽の調べ②

最近よく聴くようになった音楽はベートーベンとバッハにあわせてマーラードボルザークである。主旋律のなかに西洋音楽の伝統が息づいているが、ユダヤ教の影響からボヘミアンなリズムも聴きのがすことはできない。ジャズの要素満載なのだがなにかうったえたかったものがあり作曲することになったのか、あるいは作曲するうちにうったえたいことがでてきたのかはさだかではない。
 マーラーの音楽はフリージャズをきいているようでベートーベンのように「かっちり」はしていないが、構成がマーラー自身が「棒振り」(指揮者)であったためにオーケストラの聴かせどころをきちんとわきまえている。「歌曲」がおおいなぁと思ったがウィーンの国立歌劇場の音楽監督をつとめていたことであとでおどろいた。すこし聴いてみると『スター・ウォーズ』や『パイレーツ・オブ・カリビアン』のメインテーマに聴こえなくもない。
「主張低音」に耳をかたむけていくとマーラーの込み入った曲のなかの一歩奥の「簡潔さ」がきわだってみえてくる。「うん・た・た・た」「うぃん・た・た・た」などの執拗なリズムがきざみこまれてマーラーの音楽(物語り)は進んでいく。分裂気質で同じ年代のフロイト精神分析を依頼したことは作曲者であり指揮者でもあったマーラーのデモーニッシュな一面をうかがい知ることができる。
 それに比べてドボルザークの音楽は黒人霊歌アメリカについたときのおどろきをスケッチブックにスケッチしてジャズの要素を取り込みながら、ドボルザークなりのボヘミアン思想をもりこんでいる。強い旋律と弱い旋律を巧みに織り込みながらまるでキルトの編み物をしていくように交響曲は進んでいく。うちよせてはひき、うちよせてはひく海のなみのようである。そのなかにドボルザークなりの宇宙観が交響曲第9番『新世界より』から見え隠れされている。落ち着いた旋律は日の明け方をあらわしているようでもあり、新天地のアメリカの到来を予見するようでもある。