『手記 自然学を求めて』その4

 私は理論物理学に関する詩を書くことにした。お金を払って詩を投稿する団体を見つけたからだ。正孝先生からは「お前は学問に向いていない」とかつていわれたことがある。こつこつ努力することが苦手なのだ。『ファインマン物理学のⅤ量子力学』を原稿用紙の裏に筆写している。これがまた抽象的で難解なもの。もともと私は文系なので数式など火を見るよりも嫌いなのだ。しかし、惹かれてしまう。いったいなぜなのだろう。博識なKさんにいろいろ相談してみると「環境に影響されるため」といっていた。K先生はシンガーソングライティングすなわち歌詞を書いて歌うことが趣味で詩を書くことはおてのものだった。

 「慈雨がふりそそぐ」
 
 雨がしとしと降っている いったいなぜなのだろう 天からの恵みなのか
 
 どうしたら晴れやかな気分になるのかなぁ 永遠の晴れはつづかない
 
 陸上の試合が終わると 慈雨のごとく ふりそそぐ

 君は納得してくれるだろうか 数式のラブレターを ぼくは物理屋

 K

 K先生は理論物理学の研究のかたわら歌うことに真摯にとりくんでいた。社会人チームの陸上競技部に所属しており、専門は長距離で3000m障害を得意としていた。この競技は水郷がありハードルの化け物のようなものを飛び越さなければならない。 風のように走り抜けるK先生は私のあこがれの的だった。私は体重が重すぎて軽やかに走ることができない。

 K先生の専門分野は理論物理学の中でもヒッグス粒子の研究だった。スイスのジュネーブにあるSERNやLHCにときどき通いながら研究を進めている。特殊機関の仕事だった。おばあちゃんもときどきやってくる。